俺はコイツの眼が好きだ。

肉食獣特有の、見たもの全てを射抜く視線。

対峙すると、射抜かれる…その緊張感が堪らない。

 

 

そのカオ、ぞくぞくする

 

 

「任務、終了しました」

ぽた…ぽた…っ

指銃を使った後だからなのか、手からぽたぽたと血が流れ落ちている。

だが、だれもそれが目の前の男のものだと心配などしない。

この男、ロブ・ルッチが任務で怪我を負うなど、天地がひっくり返ってもありえないからだ。

 

「ご苦労だったな」

「全くで…」

「お前も歯に衣着せねぇよな」

「必要ですか、ソレ」

「いや…下がっていいぞ」

 

その台詞を合図に、足早に自室へと戻るルッチ。

この時ばかりは、誰も好き好んでヤツに話しかけはしない。全身に纏う殺気がそうさせているのだ。

 

「よう、ルッチ」

「退け、馬鹿犬」

「るせぇよ、血に塗れたまま帰ってくるなんざ、テメェもヤキが回ったか?」

「…五月蝿ぇよ、バカヤロウ」

いつもからだと考えられないほど余裕がない。

目の前にいるのは、人型の血に飢えた獣なのだ。

鋭い相貌が、普段以上にその美貌を冷たくしている。

 

「本当に、余裕ねぇのな?」

「用がないなら、さっさと退け」

「いつもなら、力ずくでも通るんじゃねぇのか?」

「……そうして欲しいのか?」

す…っと、切れ長の眼が眇められる。

一睨みでビリビリと身体が痺れるほどの力を秘めた双眸。

その眼で見つめられるだけで、ゾクリと肌が粟立つ。

「ま、これ以上機嫌悪くしても仕方ねぇし、この辺で止めとくわ」

そう、こういうことは引き際が肝心。ただ闇雲に煽るだけじゃあ芸がない。

「じゃぁな」

すっと身を翻して道を空けてやると、くるりと後ろを向いて歩き出した。

 

 

「……待て」

低く呻るような声と共に、不意に右腕を掴まれる。

「何だよ?」

「散々喧嘩を売っといて、自分一人帰るのか?」

「喧嘩なんざ売った覚えねぇよ」

「ほう、ならなぜ俺に絡むんだ?」

「絡んでねぇって、もう用ねぇなら離せよ!」

パシリ…ッ

自分の手を掴んでいたルッチのソレを、忌々しげに払いのけた。

その瞬間…

ルッチの纏う殺気が何倍にも膨れ上がり、双眸に酷薄な光が浮かぶ。

「痛っ!!」

そのまま、引きずられるようにして、その一番近くにあった資料室へと連れ込まれた。

 

 

「てめ…っふざけん…んんっ」

抗議の台詞を言い切ることもなく、俺の口は馬鹿猫のそれで塞がれた。

「ん…ふぅ…ん―――…っ」

余裕なく口内を荒らして、塞いだのと同じ唐突さで離れていく。

口が塞がれていると、より一層嗅覚が敏感になる。

ルッチの纏う血の匂いに噎せ返りそうだった。

こっちまで、興奮してくる。

殺しの任務の後は、たいていこうなる。

理性で抑えはするが、内なる獣が声を上げ始めるのだ。

 

「お前が煽るからだ」

「は…?」

「手加減できる余裕がねぇから、このまま部屋まで直帰する気だったのに」

手加減だア!?この状態でよくそんなふざけた台詞が出てくんな…

 

「この…馬鹿猫が」

「何だと…んぅ…っ!?」

先刻の仕返しとばかりにこちらから口付けてやる。

目の前の馬鹿は本気で驚いているようだ。…まぁ、俺からすることは少ねぇからな。

肉厚の唇を緩やかに啄ばみ、上唇をそっと吸う。

そうして、下唇も同様に啄ばんで…。

がり…っ!

「っっ…!!?」

思いっきり噛んでやると、その綺麗な唇から一筋の紅い線が出来る。

「貴様…っ!」

困惑から怒りに変わり、俺の身体は壁へと叩きつけられる。

「…痛ぇな」

「ここまでしたんだ…覚悟はいいな、ジャブラ」

すでに、双眸は怒りの色を湛え、舌が、自分の唇の血を舐めずった。

それを見ていると、まるで自分が獲物にでもなったかのようだ。

 

そのカオ、ぞくぞくする…。

血の匂いに理性を失い、怒りに身を任せたそのカオ。

俺しか…知らねぇそのカオは、本当に興奮する。

 

もっと……見てぇ…

 

「るせぇな…手加減だ、何だと抜かすなよ」

 

ぺろり、と舌なめずりを一つすると、ヤツの喉が嚥下するのが分かる。

そう、お互いに余裕なんか必要ないのだ。

 

「……来いよ」

 

首に噛り付くように自分の方へと引き寄せて、俺は誘いの台詞を唇に乗せた。

そのカオを、もっと引き出すために…

 





FIN



 

くずのは「鬼畜系攻め台詞なのに、ジャブラさんに言わせちゃいましたvv…ところでジャブラさん」

ジャブラ「ア?何だよ??」(嫌な予感…)

くずのは「これ見ると…なんか本気でMっぽい」(襲い受の獣でM?)

ジャブラ「ざけんな!誰がMだ、誰が!!」(机をだんだん叩いて抗議)

くずのは「だって…血に興奮した猫さんが好きで、睨まれるとぞくぞくするんデショ?」(半眼でじーっと凝視)

ジャブラ「う…っ」(たじたじ)

くずのは「挙句、自分から誘っちゃったり…」(くす…っ誘い受かぁ)

 

ルッチ「ほう、知らなかったな」(ふむふむ、と影で学習する諜報部員)

 

ジャブラ「!!!!!Σルッチ!」(うわ、ヤバイ!……エマージェンシーコール発動中)

ルッチ「なるほど、犬は痛かったり苛められたりが好きな訳か」(一度やってみたかったんだが、嫌がるかと…)

ジャブラ「だ・か・ら!違うっつってんだろ!!」(人の話を聞け!!と、机をバンバン)

ルッチ「モノは試しだ、今度あたり蝋燭でも買い込むか…」(いや、犬はこの程度では満足出来んか?)

ジャブラ「やーめーろー!!ぶっ殺されてぇのか、テメエは!!!!」(どがぁんと、叩きすぎで机を粉砕…)

 

エニエスロビーは今日も平和です♪